釧路へ一泊二日で観光に行った際に1日目はレンタサイクルを借りて釧路市街地の観光をしました。その中で訪問した場所の一つが、旧太平洋炭礦炭鉱展示館です。この施設、丘の上の高台にポツンと小さな建物が建っているだけで、外見からはあまり期待ができないような雰囲気を漂わせているのですが、実はかなり迫力がある展示内容になっています。
まず、建物の横には坑道堀進機という大きな重機が展示されています。昭和41年ですから今から60年近く前に導入された高性能・高能率の採堀機で先端にある二基の車輪状の切削機で炭壁を上から切り落とすようになっています。切り落とされた石炭はギャザリングローダーでかき寄せて後方に待機するシャトルカーに積載する仕組みになっています。
その坑道堀進機の後ろ側はこんな風景が広がっています。
こちら側も北海道らしい雰囲気が漂っています。
この丘の上の場所はいったい何なのだろう?と思い調べてみると、1969年に太平洋炭礦が従業員の福利厚生と地域振興を目的に、遊園地・ボウリング・プール・スパリゾートといった多岐にわたるレジャー施設を設置していた場所なのだそうです。1980年に炭鉱資料館はその中の一つの施設としてオープンしたあと、2002年にヒルトップが閉園したあとも炭鉱展示館として残り続けています。
Wikipediaによれば、2013年(平成26年)3月に炭鉱展示館および青雲台体育館、旧温水プール関連施設(旧温水プール場、旧座敷型和食食堂建物、旧初代銭湯建物、旧温水プール入場券売り場、付設ゲームセンター等)以外の全建物を解体・更地化しています。また、コールマイン海外技術研究生向け教育施設として数年間転用され、その後廃墟のまま放置されていた旧温水プール関連施設建物を2019年(令和元年)5月に解体しています。
博物館は大人一人300円、小人200円となっています。博物館は無人ですので、館内に入る前にすぐそばにある青雲台体育館の受付で手続きをします。この体育館も旧ヒルトップ時代の一つの施設でした。
10名以上は団体割引料金もありました。
館内には夏休みということもあって数組のお客さんが見学をしていました。こちらはテレビで炭鉱のことを紹介しているコーナーです。
こちらは炭鉱の様子をミニチュアにしたものです。海底炭鉱の様子が立体的に判ります。
太平洋炭礦株式会社は大正9年に設立されました。前身は1905年に採掘を始めた安田炭礦です。その後、日本のエネルギー政策が国内の石炭主体から石油へ転換したことを受けて事業転換を図り、石炭の採掘事業のみが分離されて太平洋炭礦株式会社として存続しましたたが、2002年(平成14年)1月30日に閉山となっています。閉山までの82年間で、採炭量は1億トン以上でした。
閉山後は、釧路コールマインが採炭事業を引き継ぐ形で2002年4月9日から本格的に石炭の採掘を復活させて、年間50万トン規模の採炭を続けています。
当時の品々が展示されています。
石炭の種類についても解説されていました。
出炭量・社員数・生産能率のグラフです。昭和40年代から平成11年にかけて右肩上がりに生産能率が上がっていることが判ります。重機などの機械で効率よく採掘ができるようになったためでしょうか。
ここから地下に通じる階段を下りて模擬坑道へと進みました。外は真夏でとても暑かったのですが、地下なのでヒンヤリとしています。まず最初に目に飛び込んできたのは坑内用の電気機関車です。とても背が低くて、まるで模型の機関車のようにも見えますが、これが大活躍していたのでしょう。
公称重量は12トン、レール幅はナローゲージの610mm、架線電流は直流500V、速度は時速18Km、けん引力は2トン(最大3トン)です。パンタグラフが低いところについているのが独特です。狭いトンネルの口径に合わせるとこのような形にせざるを得なかったのでしょう。
坑内で働く電気機関車というと、無骨なものを想像しますが、この電気機関車は丸みをおびていて、そのまま遊園地にもっていけば使えそうな感じもします。東芝製の電気機関車です。
後ろには材料鉱車が連結されています。
坑内モニターが展示されていました。
こちらはシャトルカーです。
このギザギザで坑内を掘り進んでいきます。あまり細かくなりすぎても、大きなままで削り取られてもいけないので、程よいサイズで石炭が採掘できるように形状には工夫がこらされています。
今回はレンタサイクル行きましたが、かなりの坂道を登って行ったところにあるので、電動アシスト付きのものでないと厳しいと思います。公共交通機関で行く場合は、「くしろバス17系統白樺線」の「白樺台行き」に釧路駅前より乗車し約20分、「スカイロード」で下車です。同じ白樺線でも晴海団地経由便はスカイロードを経由しないので注意です。
【2022年10月1日追記】
ディーゼル機関車と石炭列車32両が解体へ
スカイロード周辺を車で走っていた時だったと思うのですが、ディーゼル機関車や石炭運送用の貨車が留置されているのが見えました。なぜここに留置しているのだろう?と思いつつも、横目で見る程度であまり気にせずに通り過ぎてしまいました。
今日の報道で気がついたのですが、これは2019年6月に廃止された太平洋石炭販売輸送臨港線で、最後まで在籍していた車両が海外に売却されて再活用される計画だったそうです。
しかし、その計画がコロナ禍で頓挫してしまい、残念ながら列車は解体されることが決まりました。解体後に部品の一部は釧路市立博物館に寄贈されます。
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